東京地方裁判所 昭和46年(ワ)1338号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕(過失相殺の当否)
一 原告は前記交差点南側の歩行者信号のある横断歩道(長さ約二九メートルで、途中歩行者が立ち止まつて安全といえる場所はない。)を東から西へ向け、青信号に従つて横断を開始し、中央線を過ぎてから同信号が黄色に変わつたので、急ぎ足で横断を続けたこと、甲車は右横断歩道南側の停止線手前で信号待ちしていたが、青信号に変わつた直後、左右の安全を確かめることなく発進し、本件事故に至つたものであることが認められる。
右事実によれば、横断歩行者である原告にとつて、より安全な横断方法が選択できる余地はあるにしても、原告が道路交通法にしたがつて横断したことは否定できないところであるから、事故により原告に生じた損害賠償額算定につき過失相殺をするのは相当でない。
二 解雇による収入減(請求原因三(二)(1)二及び(2))について。
原告は、前記解雇が事故による受傷に基づくものと主張するけれども、山陽が原告を解雇した理由は、企業都合(人件費節減)にあつて、表面上原告の受傷に藉口したものと解せられ、原告の右主張を肯定するに足る証拠はない。
なお、原告の解雇時以後の収入は、事故時のそれに比しかなり劣つている。しかし、原告は昭和一五年頃以降東京市電気局あるいは東京電力株式会社勤当時以来、山陽の代表者田辺賢と種々のつながりをもち、そのような関係から山陽に雇入れられ、一時は監査役に名を列らねている。原告が同社に雇われて給与を受けていることは、このような古くからのつながりと無関係のものではなく、いいかえると、原告の労働能力と必ずしも対応していないのである。これが原告が山陽を解雇された背景ということができる。
(高山晨)